ダーツの規制機関であるDRA(Darts Regulation Authority)が、2026年4月5日付で新たな適格性ポリシー(Eligibility Policy and Rules)を施行した。これにより、DRA管轄下の女子大会への出場は生物学的女性(biological female)のみに限定される。PDC女子シリーズで6勝を挙げたオランダのトランスジェンダー選手ノア=リン・ファン・ルーヴェンは事実上のキャリア終了を突きつけられた。
新ポリシーの内容
DRAの新ポリシーの骨子は以下のとおり。
| オープン大会 | 生物学的性別・法的性別・性自認を問わず、すべての選手が出場可能 |
| 女子大会 | 生物学的女性(Y染色体を持たない者)のみ出場可能 |
| トランス男性 | テストステロン治療を受けていない場合、オープン・女子の両方に出場可。治療中はオープンのみ。治療中止後4年間は女子大会に出場不可 |
| 確認方法 | DRAは医療文書やSRY遺伝子検査による適格性の証明を求めることができる |
| 違反時 | 成績の取消、賞金・ランキングポイントの没収 |
| 見直し | 年1回の定期レビューを実施 |
DRAは声明で「すべての選手がオープン大会に参加できることを重視しており、包括性を追求する」としつつ、女子大会については「公平な競争環境の確保」を優先する姿勢を示した。
決定の根拠
英最高裁判決(2025年4月)
2025年4月16日の英最高裁判決(For Women Scotland v The Scottish Ministers)により、平等法2010における「性別」は生物学的性別を指すことが全員一致で確認された。性別認定証明書(GRC)を取得しても法的性別は変更されないとする画期的判決だ。これにより、DRAは平等法第195条(スポーツにおける性別による参加制限)に基づく措置を講じる法的根拠を得た。
ヒルトン博士の報告書
DRAが委託した発達生物学者エマ・ヒルトン博士の報告書は、ダーツを「性別の影響を受けるスポーツ(gender-affected sport)」と結論づけた。「身長、四肢の長さ、肩幅、筋肉量など、複数の小さな性差が蓄積し、ダーツにおいて男性に優位性をもたらす」とし、リーチ、安定性、投擲メカニクスにおける差異を具体的に指摘した。
ファン・ルーヴェンの声明
2024年にトランスジェンダー女性として初めてPDC世界選手権に出場し、PDC女子シリーズで通算6勝を挙げたノア=リン・ファン・ルーヴェン(29歳・オランダ)は、4月9日にInstagramで動画声明を発表した。
「メールが届いて、どうやら私は引退させられたようです。自分の意思ではなく、もう出場が許されないからです」
「何年もかけて必死にここまで来ました。毎試合、毎日、このスポーツをリスペクトしてきました」
「これは私だけの問題ではありません。トランスコミュニティにとって、また大きな打撃です」
「これで終わりではありません。もう一度出直します。まだ戦いは終わっていません」
ファン・ルーヴェンはオープン大会(PDCメインツアーなど)には引き続き出場可能だが、競技キャリアの基盤だった女子大会からは締め出されることになる。
影響範囲
| 大会カテゴリ | 影響 |
|---|---|
| PDC女子シリーズ | DRA管轄のため、新ポリシーが適用される |
| PDCメインツアー(オープン) | 影響なし。トランス選手も出場可能 |
| WDF大会 | WDFは2025年7月に独自に同様の制限を導入済み |
PDCとWDFの双方で女子大会が生物学的性別に基づく制限を導入したことになり、世界のダーツ界全体でトランスジェンダー選手の女子大会出場の道が事実上閉ざされた形だ。DRAはPDCおよびPDPA(PDC選手協会)と協議のうえでポリシーを策定したとしている。